原題:Alita: Battle Angel
製作年:2019年
製作国:アメリカ
配給:20世紀フォックス映画
監督:ロバート・ロドリゲス
製作:ジェームズ・キャメロン、ジョン・ランドー
製作総指揮:デビッド・バルデス
原作:木城ゆきと
キャスト:ローサ・サラザール、クリストフ・ワルツ、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリ、キーアン・ジョンソン 等
(以上、映画.comより)
(あらすじ)
数百年後の未来。スクラップの山の中から奇跡的に脳だけが無傷の状態で発見されたサイボーグの少女アリータ(ローサ・サラザール)は、サイバー医師のイド博士(クリストフ・ワルツ)の手によって新たな体を与えられ目を覚ます…。
90点/100点
木城ゆきとによる漫画「銃夢(ガンム)」のハリウッド映画化作品。監督は「シン・シティ」のロバート・ロドリゲス、製作に「タイタニック」「アバター」のジェームズ・キャメロン、ジョン・ランドーのタッグが名を連ねる。
予告動画が公開される度に各所で話題に上っていたアリータバトルエンジェルが、満を持して公開された。製作陣は実に豪華であったが日本の漫画作品のハリウッド映画化。下手をしたら出来がひどいことに…とも危ぶまれていたが、その結果は。
「大成功」と言っていいだろう。素晴らしい実写映画化であると言える。原作の世界観を崩しておらず、その上で新たなエッセンスを追加して122分の映画作品にまとめている。ここまで凄い実写化作品というのは歴史的とさえ言えるのではないか。
さて、何が凄いか。まずは未来の街並みを綺麗に描いていること。数百年先の未来という設定だが、まるで本当に未来に見に行ったかのような街並み。空気感がとても自然で、すぐに頭に入ってくる。また、街並みだけでなく文化、服装などの細かい設定も実に上手く作りこまれていると言える。この部分についてはまさに、軽々と原作を超えてきていると言える。
そして、CGや撮影技術について。アリータをはじめとするサイボーグ達の表現。人間らしさとメカ感のブレンドが絶妙であり、無理な感じがしない。戦闘シーンは映画「モータルコンバット」並みのぶっとびバトルだが、しっかり重量感があるため説得力がある。ここはさすがハリウッドの最新の技術力と言うべきか。更に、原作でも登場した格闘球技である「モーターボール」。この映画では一つの目玉とも言える、ド迫力のバトルに仕上がっている。実にエキサイティングだ。とにかく、CG技術や撮影についてここまで念入りに手を入れているという事にとても感心させられる。
そして脚本。実にうまくできているストーリーである。ネタバレになってしまうためあまり深くは触れられないが、大まかな流れが原作通りである。しかし、物語の根本が全く違う。この映画「アリータ バトル・エンジェル」はバトル映画ではなく、ボーイミーツガールの愛の物語なのだ。主人公アリータはこの映画の中で様々な生きる目的を見つけているが、一貫しているのは愛である。ここが映画版での一番のオリジナル要素なのだが、そのおかげもあって綺麗に一本の映画として話がまとまっている。
さて、映画オリジナル要素という話が出たところで、原作とどのくらい違うかという事にも少し触れておきたい。といっても、実はほとんどないのだ。上記のように映画全体が「愛の物語」になっている事くらいだ。もちろん、その影響によってストーリーや設定など、ところどころ原作から変わってはいるのだが、ほとんどの事は原作準拠である。あまり重要でない事すら再現している程。つまり原作リスペクトの度合いが凄いのだ。アリータ(原作ではガリィ)のパンツァークンスト、イドのロケットハンマーなどもそのまま再現されており、他にも、原作で見た事あるシーンが所々で使用されていたりと、原作ファンならニヤリとするだろう。
というように、原作再現を十二分に果たした上で程よくオリジナル要素を入れ、難易度の高いSF世界をCGで上手く表現した、非常に素晴らしい映画だと言える。原作を読んだかどうかでも評価は変わるとは思うが、原作未読者でもぜひ映画館に足を運んで観てきてほしい。そんな映画だ。