原題：Searching
製作年：2018年
製作国：アメリカ
配給：ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
監督：アニーシュ・チャガンティ
製作：ティムール・ベクマンベトフ、セブ・オハニアン、アダム・シドマン、ナタリー・カサビアン
キャスト：ジョン・チョウ、デブラ・メッシング、ジョセフ・リー、ミシェル・ラー ほか
（以上、映画.comより）
（あらすじ）
主人公デビッド・キム（ジョン・チョウ）は、娘マーゴット（ミシェル・ラー）と二人で暮らしていた。以前は良好な家族関係であったが、妻のパメラを癌で亡くしてからはマーゴットと疎遠になっていった。ある日、マーゴットは勉強会に参加するために外泊すると言って出かけたが、その晩にデビットが就寝中、マーゴットからの着信が三度あった。そして翌日に連絡するも一向に返事がない。不審に思ったデビットは警察と協力し、マーゴットのSNSやPC内の情報から、消えたマーゴットの行方を捜す…。
83点/100点
物語のキーがSNSであり、パソコンの画面が多用される実に挑戦的な作品。ジャンル的にはスリラー・サスペンス映画に分類されているが、実際はミステリー映画である。人々の様々な言動、そしてSNS内の画像や文章に手がかりが散りばめられており、注意深く鑑賞すれば観客もしっかり推理できる。とても良質なミステリー映画作品である。
ストーリーとしては、前述したように消えた娘の行方を父親が探すという単純なものであり、最後までぶれない。しかしその中でも話は二転三転し、飽きさせない作りは大したものだ。はたして娘がいなくなったのは家出なのか、事故なのか、誘拐なのか、それともまた別の何かなのか。ハラハラしつつも、最後まで楽しく推理できる。
そして、インターネットから情報収集をするという要素も、上手く物語に組み込まれていて実に面白い。そして垂れ流されている娘の情報もよくできている。主にマーゴットが入り浸っていたのは動画配信サイトなのだが、何の面白みもない動画配信に対して視聴者が脱げと言ってみたり、それをブロックしてみたり。知らない人とくだらない会話をしていたり。その他諸々…、あるあるだなぁ、と楽しめる。日本では少し前まではネットリテラシーとして、「インターネット上で自分の顔を公開しない」という事が常識になっていたため、他国は別として日本ではそれは避けられてきていた。ましてや、自分の顔がはっきり映った動画を配信するなんて愚の骨頂であった。しかし近年はFacebookを皮切りにInstagram、そして若者の間ではTicTokと、ネットリテラシーの考え方が変わりつつある。そのためこの映画でのSNSの在り方（顔を晒した動画配信）についても自然と受け入れる事ができるだろう。
しかし、それを安易に受け入れていいのだろうか。顔のはっきり映った動画を配信する事に疑問を持つという、旧い価値観の方が正しいのではないだろうか。この映画は、そういった問いかけを提示しているのだ。インターネットという巨大なネットワークが発達しており、様々なSNSが普及しているが故に。知らない人の名前や顔、その他個人情報を容易に入手できる。知らない人との新たな繋がりを作ることもできるし、昔の知り合いを探して連絡を取る事もできる。そして、この映画のような事件も起きる。この映画でなくても、現実でもSNSから引き起こされる事件は後を絶たない。しかし同時に、この映画でもそうであるが、ネットワーク内に残った情報から事件を解決する事もできる。それだけ、ネットワーク上には膨大な情報が存在しているのだ。
今更、世界中に広がってしまったものを畳む事はできない。そのため、正しくインターネットを利用する、という事が大事なのである。特に、この映画は子供のインターネット利用に焦点が当てられており、実際問題、子供のインターネット利用法こそ、正しく教育する事が必要であろう。この映画では親子の絆というものもテーマになっているが、「ちゃんと親子で会話しよう」という安直な結論ではなく、「親が子に正しくインターネットを利用する方法を教えよう」という隠れたメッセージに気づかなければならない。
この映画はインターネットをよく利用する人こそ親しみやすいものだが、あまりインターネットを使わない人にもわかりやすく作られている。親子で一緒に鑑賞するのが理想ではあるが、世代を問わず様々な人に見てもらいたい映画だ。
