原題:Buried
製作年:2009年
製作国:スペイン
配給:ギャガ
監督:ロドリゴ・コルテス
キャスト:ライアン・レイノルズ
(以上、映画.comより)
75点/100点
狭い棺の中。面積にして一畳ほど。首を起こす程度の高さもない。そのような環境の中で90分行われるライアン・レイノルズの一人芝居である。棺の外のシーンは一切なし。究極の低予算映画であり、究極のシチュエーション映画である。これ程に徹底したソリッド・シチュエーションの映画は恐らく、未来永劫作られる事はないのではないのだろうか。これだけで大変に、映画界で価値のある作品だと言える。
ということで、先日は狭い狭い洞窟を探検する映画「ディープ・サンクタム」のレビュー記事を書いたが。今回のテーマはその繋がりで「狭い映画」である、「リミット」である。なお原題は「Buried」生き埋めである。この「Buried」という原題も実に絶妙であり、主人公ポールが入れられている棺が、地中に埋められているという事がタイトルでわかるという加減である。狭い棺の中で地中に埋められている。大変だ。
さて、ではこの映画はそんな狭さで、しかも外のシーンは一切描かず、いかに90分持たせているか?例えば携帯電話がある。それを使い電話をしたり動画を撮ったりする。また、お酒とライターがある。それらを使って火をつけてみたりする。そして、生き埋めということなので勿論、空気がなくなりそうになる問題や砂が降ってくる問題も出てくる。
それらの積み重ね、積み重ねで、気づけば90分経っているのだ。これは凄い事である。この映画が面白いかどうか以前に、よくこの限られた条件下での映画を一本成立させた、と感心させられる。そしてそれだけではない。この映画は「面白い」のだ。そうなるとこれは、物凄い事である。テイストとしては、スリラーの形を取りながらも真相を究明しようとする、どうにか脱出しようと工夫する、ということでミステリーの要素も大きい。そのためハラハラするだけでなく、観客の好奇心も煽り実に退屈しない90分を楽しむ事ができる。終わり方もエッジの利いたなかなかのもので、納得できる。
この映画から学べる事は大きい。限られた材料で良いものを作る…その「限られた」の範囲は人それぞれであるが、これは映画に限らずありとあらゆる事に言える真理なのではないだろうか。限られた材料でも、アイデア次第では何でも実現ができる。可能性は無限大なのだ。
ちなみに、主演のライアン・レイノルズ。肉体派俳優として一定の評価を得ていたが、この映画の後の主演作「グリーン・ランタン」が大コケしてしまった。しかし今は「デッドプール」で特大ブレイクを果たし、海を越えた作品であるポケモンのピカチュウの声(名探偵ピカチュウ)までも演じる事となった。人生はわからない、といったところだが、この「リミット」で極限に素材を削った上で唯一切り捨てなかったライアン・レイノルズという俳優がここまで人気俳優になったというのはまた面白い。