原題:Detroit
製作年:2017年
製作国:アメリカ
配給:ロングライド
監督:キャスリン・ビグロー
製作:ミーガン・エリソン、キャスリン・ビグロー、マシュー・バドマン、マーク・ボール
キャスト:ジョン・ボイエガ、ウィル・ポール、アルジー・スミス、ジェイコブ・ラティモア、ジェイソン・ミッチェルカール
(以上、映画.comより)
82点/100点
1967年に実際に起きたデトロイト暴動と、その最中に起きたアルジェ・モーテル事件を題材としたドラマ映画である。前半はデトロイト暴動が起きた経緯の説明と、暴動1~2日目の様子。後半はアルジェ・モーテル事件の様子を描く。
この映画の肝となるのは、あくまで後半部のみ。アルジェ・モーテル事件関連の話である。実際に起きた事件であるがこれがどういった話かと簡単に言うと「暴動で血が上った白人達が、モーテル内の住人を監禁し一人ずつ殺していく」といったもの。この様子がとにかくひどい内容で、胸糞悪くなる。胃がキリキリ痛むほど。この部分だけ切り取って一本のホラー映画が出来上がるのではないか、というくらい。まあ、実在の事件をホラーと言ってしまうのは違うとは思うが、とにかくこの部分のクオリティが秀逸である。演出、カメラワーク、演技、どれをとっても称賛に値する。その凄まじさから、事件の悲惨さがよくわかる。
キャストもなかなか豪華であるが、ひと際目を引くのが、悪役白人警官のフィリップ・クラウス役である、ウィル・ポールターである。彼は映画メイズ・ランナーのギャリー役など、とにかく「嫌な奴」なキャラの演技が上手い。今回もとにかく嫌な奴、というより凶悪な警官役を見事にこなし、視聴者に絶望を与える。黒人達に対しては絶対的な権力を持っているかのよう傍若無人に振る舞うが、組織の中ではほんの一個人となり、焦りの表情を見せるのも実に上手い。主役を張るタイプではないが、演技力が高く素晴らしい役者である。
この映画をお勧めしたいのは、アメリカの歴史や人種問題に関心がある人。だが、関心がない人にも一度見てもらいたい。まあつまり、大変よくできた映画なので多くの人に一度見てもらいたい。しかし、映画に娯楽だけを求める人には向かないとは思う。胸糞悪くなるし、最後もあまりすっきりする終わり方ではないからだ。
それと、こういったドラマ映画では珍しいことではないが、主人公が存在しないことに注意だ。一応、映画の後半で中心になる人物グループというものは存在するが、それでも決まった主人公というものがいない。群像劇とも違う。明確な主人公が存在する映画に慣れていると、話にのめりこむまで時間がかかるかもしれない。