製作年:2017年
製作国:日本
配給:アスミック・エース、ENBUゼミナール
監督:上田慎一郎
脚本:上田慎一郎:市橋浩治
撮影:曽根剛
録音:古茂田耕吉
キャスト:濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、長屋和彰、細井学 ほか
(以上、映画.comより)
87点/100点
映画専門学校「ENBUゼミナール」のワークショップ「シネマプロジェクト」の第7弾として製作された作品。いわゆるインディーズ映画だが口コミで高い評判が広がり、全国で拡大公開されるという異例の大ヒットを記録した。
公開直後に映画館へ足へ運び感銘を受けた作品。無事地上波デビューも果たされたため、記事を書いてみよう。
説明不要だとは思うが、この映画は「ゾンビ映画を撮影する」映画である。ジャンルとしては、コメディ映画として分類されるだろう。これ以上のストーリーの紹介はネタバレになってしまうので書かないでおこう。というのも、この映画が数々の人により紹介されるたびに言われてきた「ネタバレ厳禁」、これはこの映画を100%楽しむためには守らなければいけないことだ。だが他の「どんでん返しの類で驚かせる」ようなネタバレ厳禁映画と違って、ネタがバレていても楽しめる映画とも言えるのではないか。どんでん返しだけの一発映画ではなく、巧妙かつ絶妙であるストーリー構成に高い価値があるからだ。
この映画が面白いと感じる理由に、情報が生み出すメタ的な効果が上手く働いているという事がある。まず、前述した「ネタバレ厳禁」。視聴前に多くの人は、この「ネタバレしてはいけない」という事こそが一番重要だと予想する。しかしこのネタが割れるのが意外と早いという事は映画を観るとわかるが、ネタが割れた後こそが更に面白くなるという事。ここから得られる満足感は大きい。また、これが「インディーズ映画」だという情報。インディーズ映画という先入観を持って観る事によって、あるポイントで驚かされる事となる。この驚きは、普通の商用映画では絶対に味わえない。インディーズ映画だという特性を武器に使った、実に上手い構成だ。出演者に関しても言える事がある。インディーズ映画ゆえ、出演者知らないキャストばかりだ。そのため今までの他の役柄の印象など余計な情報がない状態で鑑賞できる。スター俳優ばかり出演する映画もいいが、これはこれで地味に助かる。脚本の完成度の高さもさることながら、これらの情報が生み出すメタ的な効果が上手く噛み合い、この映画「カメラを止めるな!」の大ヒットを後押ししたと言えるだろう。
最後に、この映画が素晴らしい事。それは、これが「映画を撮影する」というテーマで終始一貫している映画だという事にある。入念に伏線が張り巡らされ、最初から最後まで計算され、何重にも重なっているストーリー。しかし崩れないのだ。最初から最後まで、映画を撮影する映画というテーマが崩れる事はない。映画愛に溢れているのだ。これをインディーズ映画としてこの完成度で「撮影」する。この構想の面白さはたまらない。映画を撮影し作り上げる苦労、面白さ、そして感動がこれでもかというくらいに詰まった作品である。映画を撮影した事がある人は少ないと思うが、チームで何かを作ったという経験は多くの人にあるだろう。誰しもこの映画に共感できる事がきっとあるはずだ。