製作年:2017年
製作国:日本
配給:ファントム・フィルム
監督:大九明子
原作:綿矢りさ
脚本:大九明子
エグゼクティブプロデューサー:福嶋更一郎、津嶋敬介
キャスト:松岡茉優、渡辺大知、石橋杏奈、北村匠海、趣里
(以上、映画.comより)
(あらすじ)
恋愛経験のないOLの江藤良香(松岡茉優)は、初恋の相手であるイチ(北村匠海)への偏執的な愛情を抱き続けていた。そこで職場の二(渡辺大知)から突然告白され、二人の男の間で悩む。
70点
綿矢りさによる恋愛小説の実写映画化作品。
さて、まず割とどうでもいいことだが、致命的な事を言いたい。主人公は恋愛経験ゼロのオタクOLという設定。そういう設定…なのだが。松岡茉優だ。いかに眼鏡をかけさせ、髪をやぼったくさせ、センスのない風な私服を着させても、松岡茉優だ。素材がよすぎるのだ。というか、OL役だからしょうがないとはいえしっかりメイクしているし、恋愛経験ゼロな雰囲気を出せるわけないのでは。と書きはしたが。この映画は松岡茉優の映画だ。とにかく彼女の演技が全てなワンマン映画だと言える。彼女の凄いところは、全身を使ってしっかり演技をするところだ。舞台俳優に近い感じの雰囲気である。とにかく演技が派手で、華がある。恋愛経験ゼロな雰囲気は残念ながら出せていないが、それでもまあいいか…と思えるくらいに、いい演技だ。
そしてこの映画、ミュージカル要素もある。あまり大きなウエイトを占めてしるわけではないが、要所要所で歌が流れ、登場人物が躍る。この歌を歌うのが松岡茉優。熱唱。驚きの上手さである。突然ミュージカルになるという演出はかなり特殊ではあるが、主人公の変な性格を表現する上手い演出になっていると言える。
ストーリーについては…単純に、二人のいい男の間で揺れる女の話である。しかし主人公のヨシカの性格がとても難儀である。一言でいえば「色々とこじらせてしまった」女性。ここの主人公に共感できる人、もしくは共感できずとも、この映画のようなデリケートな登場キャラの感情の機微を描いたものが好きな人なら存分に楽しめるのだろう。自分にはあまり共感はできなかった(理解はできる、一番共感できたのはイチ)。しかし、ヨシカに全く共感できないのに妙に感情移入できてしまう。それほどの説得力が松岡茉優の演技にあるのだ。
松岡茉優以外のキャストについては、なんとも不思議な人選である。イチの役には北村匠海。ニこと霧島の役には渡辺大知。北村匠海はバンド「DISH//」のボーカル、渡辺大知は「黒猫チェルシー」のボーカルだ。そして同じく黒猫チェルシーの小林龍二も、チョイ役で出演している。しかし、劇中で歌っているのは松岡茉優であり、主題歌(エンディング曲)は黒猫チェルシー。DISH//はいずこへ…。といっても、初めからこのような配役に特別な意図はないのかもしれないが…。
この映画を一言で言うと、「いい意味で日本らしい恋愛映画」という感じであろう。何も大きな事件はなく、派手なシーンもなし。ただひたすらに人間関係を描き続けるだけの映画。しかし細かい表現や台詞回しで繊細にストーリーは進行していく。が、その地味めなストーリーを松岡茉優の演技と歌で上手くアクセントがついている。よくできた映画である。