原題:Red Eye
製作年:2005年
製作国:アメリカ
監督:ウェス・クレイブン
製作:クリス・ベンダー、マリアンヌ・マッダレーナ
製作総指揮:ボニー・カーティス、ジム・レムリー
キャスト:レイチェル・マクアダムス、キリアン・マーフィ、ブライアン・コックスほか
(以上、映画.comより)
(あらすじ)
有名ホテルのマネージャーとして働くリサ(レイチェル・マクアダムス)は、故郷から勤務地へ最終便の飛行機で向かおうとしていた。リサは空港で好青年リップナー(キリアン・マーフィ)とドラマチックな出会いをしたが、飛行機に乗ると偶然にも彼は隣の席だった。身の上話などで盛り上がるが、どうも彼の様子がおかしい・・・。
75点/100点
ウェスクレイブン監督のサスペンススリラー。日本では残念ながらビデオスルーとなってしまったが、演技を含めた人物描写やカメラワーク、アクションなどとても完成度の高い作品である。
さて、ウェスクレイブン監督といえば、1984年「エルム街の悪夢」、1996年の「スクリーム」、そしてそれらのシリーズ作品を手掛けていることが特に有名であろう。それ以外にも多くの作品監督をしているがとにかく、ホラー映画、スプラッター映画はお手の物である。なお、ウェスクレイブン監督は2015年8月30日、76歳で脳腫瘍によりこの世を去っている。ホラー映画界を大いに盛り上げた素晴らしい人物であった。
この作品についてまず言いたいのは、脚本、演出の秀逸さだ。この物語は場面により雰囲気がガラッと変わる。序盤のロマンス溢れる日常シーン、中盤までの会話中心の密室劇のシーン、そして後半の派手なアクションシーン。全てを高いクオリティで実現できているのだ。特徴的なのはやはり、主題にもなっている飛行機内のシーンだ。飛行機の中の2席分のスペースを中心に行われる密室劇なのだが、ここの緊張感が凄い。周りのモブの効果も上手く使いハラハラさせてくれる。実に丁寧に作りこまれたサイコサスペンス映画だ。
緊張感を演出する上で貢献している事として語らずにはいられないのは、リップナー役のキリアン・マーフィーである。キリアン・マーフィーはアイルランド出身の俳優で、独特な青い瞳の持ち主として知られている。パニック・フライト公開の2005年時点でも既に映画の主演を演じているが、現在特に知られているのは「28日後…」、「ダークナイト」シリーズ、「麦の穂をゆらす風」あたりであろうか。彼はとても表情豊かで優しそうなイメージの顔を持つ俳優だが、爬虫類系?の骨格と、独特の瞳でとてもミステリアスにも見える。そんな彼が演じるリップナーという人物もまた、知的で優しげだが二面性があり、ミステリアスな役柄になっている。この難しい役を完璧な演技でこなしているのが、キリアン・マーフィーなのである。
そしてもちろんキリアンだけではなく。主役のリサ役であるレイチェル・マクアダムスも素晴らしい演技をしている。「きみに読む物語」のヒロイン役として大ブレイクしたレイチェルであるが、この映画では主演女優とし、心理戦からアクションシーンまで幅広く活躍している。コロコロ変わる表情豊かな演技は見ていて飽きない。そして美しい。リサという役も実に魅力的で、映画「エイリアン」あたりからよく見られるようになった、頭がよく戦闘もできる強い女性主人公の系譜と言える。この映画の主人公リサは、それら歴代の「強い女性主人公」に負けず劣らずな魅力を持ったキャラクターに仕上がっている。
ちなみにこの映画の原題は「Red Eye」であるが、劇中のセリフにも何度か出てくるが、夜間飛行便を意味する。パニック・フライトという日本語タイトルはかなりのB級ムービーというかパチモノ映画感を出してしまっているし、そもそもパニック・・・?という感じなのであまり好かない。どちらにしても世間的にはB級映画として評価されるかもしれないが、この作品はとてもよくできているのでサスペンス映画好きにはぜひ薦めたい。