原題:The Green Inferno
製作年:2013年
製作国:アメリカ・チリ合作
配給:ポニーキャニオン
監督:イーライ・ロス
製作:イーライ・ロス、ミゲル・アセンシオ・ジャマス、ニコラス・ロペス、クリストファー・ウッドロウ
キャスト:ロレンツァ・イッツォ、アリエル・レビ、ダリル・サバラ、カービー・ブリス・ブラントン、スカイ・フェレイラ ほか
(以上、映画.comより)
(あらすじ)
女子大学生ジャスティン(ロレンツァ・イッツォ)は、アレハンドロ(アリエル・レビ)率いる積極行動主義グループの演説を目にし、関心を持つ。彼らは原住民のヤハ族を迫害し僻地の開発をする大企業を止めるべく、アマゾンへ発つ事となり、ジャスティンも同行することとなった。現地でデモ活動をし成功を収めた彼らは、帰りの飛行機で事故を起こし、そこで原住民ヤハ族に捕らわれる事となる…。
77点/110点
映画「ホステル」のイーライ・ロス監督による、スプラッターホラー映画である。話としては、意識高い系の大学生が浅はかな考えでアマゾンに行ったところ、食人族に襲われてしまう…というもの。容赦ないゴア描写があるため、グロ耐性がない人は絶対に見てはいけない。
イーライ・ロスは多くの映画作品に関わっているが、その中でこの映画の比較対象として挙げるとすると、やはりホステルであろう。過激なゴア描写があり、また、主人公達が異国の地へ旅した先で監禁されてしまうという事も共通している。だが、この映画グリーン・インフェルノは、ホステルと明確に違う事がある。どちらも理不尽なストーリーではあるが、ホステルの場合は、全く無実な(不注意ではあるが)若者達がターゲットとなる。
それに対しグリーン・インフェルノは、ストーリー全体が因果応報で成り立っている。そもそもの事件に巻き込まれる原因が、中途半端な知識で一方的な正義を振りかざそうとした大学生達の勝手な行動(未開発地に住む原住民に頼まれてもいないのに勝手に肩入れし、多くの人に迷惑をかける)によるものであり、この時点でホステルとは大分趣旨が変わってくる。また原住民達による主人公の扱い(他の登場人物達とは扱われ方が違うのだ…!)にも、しっかり理由がある。そしてラストシーンにも因果応報が…という徹底っぷりである。ただのスプラッターホラー映画ではなく、こういった教訓的な仕掛けを無理なく施している事が作品の価値を高めていると言える。
また、恐怖演出についてもこの作品はとてもうまく作られている。食人族に襲われるという時点でわかる通り、登場人物が原住民達に食べられるシーンがある。これが実に強烈なゴア表現で描かれており、視聴者側としては「今後もこんなのが続くのか!?」と戦々恐々となるだろう。しかしそのようなゴア描写はこの時点がピークである。
だがここから物語が失速していくというわけでも全くない。この映画は手を変え品を変え、観客の恐怖を煽り続ける。勿論ゴア描写もあるが、それ以外にも心理的恐怖演出やビックリ系恐怖演出、生理的嫌悪感を伴う恐怖演出と…実にバラエティ豊かに楽しませてくれる。贅沢な作りである。「同じような演出な二回使わないぞ!」という意気込みが聞こえてくるよう。
それにしても、そもそも食人族という素材はホラー的においしい。同じ人間でありながら言葉が通じず、理解し合えないというのは途轍もない恐怖なのだ。この映画はその食人族という素晴らしい素材を上手く調理しており(作中で調理するのは食人族側だが)、多彩な恐怖演出に繋げているのだ。
というように、これは正統派なスプラッターホラー映画でありつつも、それだけではない面白さを盛り込み、計算し尽くされた映画だと私は感じた。一番の特徴はやはり、偏った知識で浅はかな主張をする意識の高い(笑)若者達を皮肉っているという事。また、そういった事を行動に移している団体は大抵慈善事業ではなく、政治や利権等が絡んでいるという真理にも踏み込むのは見事である。
こういった人々を日ごろから鬱陶しく感じている方々には是非この映画を薦めたい。そういえば日本でも最近、同じようなわかりやすい事例があった。SEALDsである。かの団体にも背後には日本共産党がついていると言われており、グリーンインフェルノの構図がそのまま当てはまる。また他にも自分には思い当たる事が色々あり、その事により一層この映画を楽しめたと言える。総じて大満足の映画であったが、描写がきつすぎるため再度見る事は恐らくないだろう…。