原題:The Imitation Game
製作年:2014年
製作国:イギリス・アメリカ合作
配給:ギャガ
監督:モルテン・ティルドゥム
製作:ノラ・グロスマン、イド・オストロフスキー、テディ・シュワルツマン
製作総指揮:グレアム・ムーア
キャスト:ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グード、マーク・ストロング、チャールズ・ダンス 等
(以上、映画.comより)
82点/100点
ナチス・ドイツの解読不可能と言われた暗号機「エニグマ」の解読機を開発し、連合国を勝利に導いたアラン・チューリングの話。
キャストは、主役アラン・チューリング役のベネディクト・カンバーバッチ、ヒロインであるジョーン・クラーク役のキーラ・ナイトレイ。この二人は特に、言うまでもなく極上である。ベネディクト・カンバーバッチはこの映画以外にもシャーロック・ホームズ役やドクター・ストレンジ役など、知的(かつどこか変)な役をうまくこなす。
この映画の特徴として、戦前(アランの学生時代)、戦中(暗号解読機の製作)、そして戦後の3つの時間軸が存在する。もちろんメインとなるのは戦中の時間軸であり、ところどころで戦前、戦後のシーケンスが挿入される構成となっている。アランがどう考えて行動したか、過去の出来事がどう影響しているか、を探る手掛かりが少しずつ与えられていく上で、エニグマ攻略の様子が描かれていくという構成である。戦中と戦後の映像の区別が直感的にわかりづらいという事はあるが、この構成が実に上手く働いている。
そして、この映画のタイトルである「イミテーション・ゲーム」の意味にも注目したい。イミテーション・ゲームとはコンピュータの思考能力を評価するために行われるゲームのことであり、アラン・チューリングの功績のひとつ「チューリング・テスト」と関係する。しかしこの映画の主題はチューリング・テストではなくエニグマ攻略にある。では何故これがタイトルに使われているかというと、アランの生き方、そしてこの映画に込められたメッセージに深く関係しているからである。アラン・チューリングは奇特な性格であり、周りに嘘をついて生きてきている。そして、不器用な生き方をしてきている。その中で彼は様々な選択を迫られる。機械ならどういう選択をするか。人間ならどういう選択をするか。機械的に答えを得るのか、それとも不器用でも人間的な選択をするのか。その嘘は本当に必要なのか。機械の知能について研究していた、アラン・チューリングの複雑な人間性に踏み込んだ作品なのである。
この作品は観客に問いかける。「あなたは人間ですか?機械であるか?」
とにもかくにも。紆余曲折がありカタルシスと挫折、不思議な入り乱れた感情を味わうことができる作品である。構成が巧いため没入感は十二分である。史実を学ぶためでも、単純に映像作品として楽しむという意味でも、万人に薦めたい映画だ。
また、アラン・チューリングとエニグマについての話についても、この映画で要点はまとまってはいるが脚色してる部分もあり、描き切れていない部分も多くある。この映画を観て気になった人はインターネットででも調べてみるとよいだろう。