原題:The Lobster
製作年:2015年
製作国:アイルランド・イギリス・ギリシャ・フランス・オランダ・アメリカ合作
配給:ファインフィルムズ
映倫区分:R15+
監督:ヨルゴス・ランティモス
製作:エド・ギニー、リー・マジデイ、セシ・デンプシー、ヨルゴス・ランティモス
キャスト:コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、レア・セドゥー、ジョン・C・ライリー 等
(以上、映画.comより)
(あらすじ)
家庭を持ち、子孫を残すことが義務付けられた近未来。妻に捨てられた主人公デビッド(コレン・ファレル)は、とある施設に収容される。そこでは孤独な男女が集められており、期間内に配偶者を見つけるか、そうでなければ野生動物に姿を変えさせられる、という過酷なルールを突き付けられるのであった…。
80点/100点
結婚or野生動物化、という突飛な設定のディストピア映画。動物に姿を変えられる、というのはさながらファンタジー映画のようなノリであるが、話のテイストとしてはかなりシビアで厳しい。野生動物化ということを楽観的なものとしては扱われておらず、はほぼ死刑と同じようなものとして描かれている。
主演は、かのアクションスターである、コリン・ファレル。しかしこの作品では、彼の普段のキリッとした顔つき、鍛えられた肉体は見られない。自身なさげな顔つき、だらしないお腹。作品、役柄にしっかり合わせており、本当に凄い役作りである。また、他の登場人物についても皆インパクトがあって面白い。特に、施設に収容されている人々。パートナーがいない人々には皆、パートナーができない理由があり、それぞれの欠点がある。その表現の仕方がとてもコミカルというかオーバーであったりし、シュールで不思議な雰囲気を出している。
話としても実に面白い。突飛な設定という事もあり先の展開が読めず、片時も目が離せなくなる。最初に主人公が収容される施設だけで話が完結するものかと思いきや、中盤から場面がひっきりなしに変わるのである。その様には知的好奇心が強く刺激される。
また、この映画に込められた現代社会への皮肉、メッセージなども考えてみると実に楽しめるだろう。配偶者を作る事を強要する社会、それに従う者、そして反発する者。それぞれのリーダー像や暮らしている場所の違い、罰則の違いなど…。それぞれの人たちの立ち位置の違いを考えると色々と考えさせられるものがある。果たして何が正義で、何が悪なのか。もちろんその正解は映画の中では示されていない。ラストシーンについても何とも言えない終わり方であり、考えさせられる。
最初から最後まで暗い雰囲気であり、視聴して決して楽しい思いや爽快感を得られる話ではない。大きなスリルもなく特別な感動もない。しかし、この映画は多くの視聴者達に強烈な体験とともに記憶に刻まれるだろう。実験的であるが、とても秀逸な作品である。